あなたの旅を充実させる「緊張感」という媚薬

あなたの旅を充実させる「緊張感」という媚薬
photo credit: Refuge d’Envers des Aiguilles via photopin (license)

先日ご宿泊いただいた初老の男性の話。

彼は山登りが大好きで若い頃から何度も何度も山登りを繰り返しているそうです。ここ金沢にも白山に登る為に来たそうです。

朝7時頃、誰も起きてこず閑散としたロビーで彼と二人のんびりとコーヒーを飲みながら、どんな山に登ったのか過去の山登りの話を聞いていました。

ふと、なにげなく「山登りが好きなのって、登頂した時の達成感があるからですか?」と尋ねたところ、「いやいや、山頂に着いた時は何も感じない、感動すらない」という意外な答えが帰ってきて驚きました。

そして「むしろ、下山して自宅に戻る電車の中の時間が一番ホッとして心地が良いかもしれない」と。

山登りって登っている途中はとても辛いけれど、登りきった時の達成感や山頂から見える景色が何事にも代えられず、その快感の為に山登りにハマる人が多いと僕は勝手に思っていました。

そして、なんでこの男性は登頂時の感動が何もないのにもかかわらず何度も何度も登山を繰り返すんだろう、辛いだけの登山のどこに楽しみを見出しているんだろうとしばらく考えた挙句、浮かんできた言葉は「緊張感」でした。

「それって緊張感がいいんですかね?!」
「大げさに言えば、死ぬかもしれない境遇に自ら飛び込み、生還すること。」
「それが登山の楽しみですか?」

と聞いたところ、しばらく考えた彼は「そうかもしれない」とつぶやきました。

弛緩した日常に張りをもたらす「緊張感」こそが彼を登山に向かわせて一因でした。きっと旅に彩りを与える要素って「感動」や「楽しさ」だけではなくて、日常では感じることができない「緊張感」も大事なんだとこの時に再確認しました。

予定調和の外側の、冒険まではいかないギリギリのラインを攻めるのが旅なのかもしれません。

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